JIS盤用VCBの保守と更新 (第35回:VCB主回路方向の違いとJIS盤への適応)
第三章 高圧遮断器の更新 虎の巻がいよいよスタートします。この中では、皆様からご希望の多かったVCB具体的な更新方法とKVアダプターの適用方法を具体的なメーカー名と機種名を挙げて、その中身を状況別に細かく絞って順次ご説明する予定でおりますので、ご期待下さい。
今回は、第1回目に事前説明としまして、JIS盤用VCBで製品化されています、3種類の主回路導体の引出し構成の違いと、JIS盤への適応について、具体的にご説明しておきたいと考えます。まず主要4社がこの3種類の主回路引出方向の違いを形式上どのように区別しているかを、下表に整理しておきます。
異既設の高圧遮断器においても、同様に、主回路の引出方向は違いますので、一般的には、同じ形態で合わせた方がいいのですが、状況によっては、異なる形態を選んだ方が更新工事がスムーズにできる場合もありますので、必ずあわせなければいけないという訳でもありません。次回(11月10日発信予定)より、具体的なメーカー名、形式名をあげたうえでのご説明としたいと考えますが、調査に時間がかかり、模型等の製作時間も必要ですので、隔週か、3週間隔くらいの発信頻度になるかと考えますが、よろしくお願いします。ちなみに次回は、東芝様のV-10から、現行品V4C-Uへの更新(t=3.2)となります。t=3.2とは、既設VCBを固定しているパネルの厚さです。他にt=2.3もあります。何故固定パネルの板厚により、区分してご説明するかといえば、東芝、三菱、富士の3メーカー様は、板厚が、3.2の場合は、パネルのみでのVCBの固定を許可しており、2.3厚の場合は、パネル固定だけではなく、床固定も併用するように指導されているからです。ちなみ、この3社とは異なり、日立様は、板厚に関係なく、必ず床支持も併用するように、指導されていますので、パネルの板厚によるVCBの固定方法に差はありません。
それでは、この主回路引出方向の違う3種類のVCBが、JIS盤の中でどう使い分けされているかをご説明します。下図に、代表的なJIS盤の平面図と、正面図を示します。
電力会社からの受電は、まず図で左上に設置される断路器(DS)となりますが、左よりR相、S相、T相とならんで設置されます。一方、盤内には、右側に、三相変圧器と単相変圧器が並んで設置されますが、配線が接続されやすいように、手前から、R相、S相、T相とならんで、配置されるのが普通です。VCBは、電気の入り口である断路器(DS)と、変圧器(TR)の中間に配置されています。導体が上方に出るのは、電源負荷が左右方向のものと前後方向のものが、使われやすいのですが、DSの配列に合わせたのが、電源負荷前後形であり、TRの配列に合わせたのが、電源負荷左右形と言えます。ですから、更新にあたって、主回路電線も更新するので、あれば、左右形も前後形も両方が適用可能であり、別の形であっても更新できない訳ではありません。
固定パネルの板厚が、t=2.3mmの場合には、VCBは、床支持しなければなりませんが、JIS盤を設計、構成する盤メーカー様はこのための支持方法として、単独に床へのポール等を使って支持するのではなく、筐体に横方向に梁を設けて、支持する場合があります。これは横方向に梁を設けることで、盤全体の耐震強度が増すことを狙ったもので、VCBの支持と耐震性の向上の両方を目的としたものです。
VCB更新にあたって、注意しなければならないのは、この横方向の支持梁を、新しいVCBの支持位置が移動することで、邪魔になる場合は、切断、排除してしまう事例があり、盤全体の耐震性が大きく下がり、弱体化してしまうことです。地震等の発生により、筐体が壊れるような事態が発生しても、本来製作時にあった筈の梁が切除改造された盤では、盤メーカー様が責任をとることはありえません。対策としては、横方向の梁はそのまま残し、新しいVCBの位置を上方に移動することで、耐震性を維持することであり、ケーイーシーのみが販売するKVベースアダプターが威力を発揮することになります。この使用方法については、t=2.3の場合の中で詳しくご説明します。
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