JIS盤用VCBの保守と更新 (第26回:東芝VCBの投入不具合対策注油)
問題の投入不具合の具体的発生状況ですが、代表的なものは、投入操作すると、通常の作動音があって、一瞬は、「入」の表示になりますが、すぐに「切」の表示に戻ってしまう投入不具合となります。トリップコイルの動きを本体に伝えるためのリンクの動きがグリースの固化により、動きが悪くなると、発生する現象です。これも、瞬間的なものであるため、目視することは困難であり、動作部分を拡大して、YOUTUBEの動画(16倍スロー撮影)にしておりますのでご覧下さい。
下記写真は、投入直前(投入ばねが、上死点を超える寸前)の状態の写真です。(機構部分を見やすくするため、手動ハンドルは、180度反転した状態で操作しています)手動投入時の機構の動作も瞬間的なものですので、YOUTUBEの動画(16倍スロー撮影)にして公開(次回のメルマガでアドレス公開予定)されますので、是非御覧ください。
問題の投入不具合を防ぐための注油箇所を説明します。前にもご説明しましたが、投入不具合を防ぐために重点的に注油するべき機構部は、トリップコイルが動作した時に動く機構です。注油する時は、動かすことが可能な箇所は極力動かしながら2~3滴注油して下さい。グリースが塗布できるところは極力実施下さい。トリップコイルに、電流が流れたり(電流トリップ)電圧がかかって(電圧トリップ)動作したときに、コイルの可動軸が動いて動作させる機構部は、図では、Fで表示される、T字型の機構部になりますので、この軸部への注油が投入不具合対策上重要です。現行品では、この動きを戻すためのバネも強化されていますが、この機構部がスムーズに動かなくなると、投入不具合が発生しますので、重点的に注油する必要があります。また。手動でトリップさせるために水平に配されているレバー軸の支持部G、Hにも注油する必要があります。尚、トリップコイル自体には、注油を行ってはいけません。この正面からの動きもYOUTUBEの動画(16倍スロー撮影)でご紹介しますので、是非御覧ください。
前回、VCBを横向きにして、真空バルブと、動作させるための主軸をお見せしました。前面側の機構部の動作により、3本の真空バルブを駆動する関係がご理解いただけたと考えます。忘れがちですが、背面側の主軸の軸受部も正面側の軸受け同様注油する必要があります。開閉動作により、真空バルブの可動電極が動く動作距離は僅かであり、瞬間的なものであるため、動作部分を拡大して、「切」状態と、「入」状態を比較して、御覧に入れます。可動電極に接続された導体断面と、固定絶縁物の位置関係を御覧になれば、理解しやすいかと考えます。実際に真空バルブの可動側電極が、上下に動く様子については、是非公開されます第二章VOL.3YOUTUBEの動画(16倍スロー撮影)で、ご覧ください。
取説を読みますと、全ての注油が終了した後で、開閉操作を5回は、行うようにと書いてあります。これは、注油した油が開閉動作により、機構の奥に移動させるための必要な操作です。ご担当されているJIS盤が、新設された状態から受け持たれている場合は、最初からの保守経過をご存じですから問題ないのですが、途中からの交代で引き継がれたJIS盤については注意が必要です。VCBを保守される際は、そのVCBの製造年に注目下さい。また、そのJIS盤自体の製造年も確認下さい。VCBの製造年とJIS盤の製造年が、大体同じ(盤の製造年月より、VCBの製造年月はやや古い筈です)であって、製造後の年数を5倍した回数と、カウンターの回数が近似していれば、心配は少ないですが、もしカウンターの回数が、経過年数の5倍よりはるかに少ないようであれば、過去にこのVCBを管理して来た先代、先々代の管理技術者の方は、取扱説明書に沿った正しい保守を行っていなかったことになり、従って、保守に使ってこられた油やグリースも信用できないということになりますので、施主様に相談して、早めに、メーカーによるオーバーホールを実施されることをお勧めします。投入不具合は、大抵前触れなく、突如として発生しますので、転ばぬ先の杖の意味でも慎重に行われた方が安全です。
JIS盤の製造年が、VCBの製造年より、はるかに古い場合は、現在使用中のVCBは更新されていることになります。更新した理由がどうだったかも確認しておいた方が賢明ですし、更新の際にどのような更新工事であったかも可能な範囲で知っておく必要があります。この辺は、第三章更新工事の虎の巻で、詳しくご説明する予定です。
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